エンジンメンテナンスにおける基礎知識

こちらは産業用エンジンメンテナンス.comが紹介する、

排出ガスの後処理装置に関する基礎知識です。

今回は、以下のリンク先で紹介した排出ガス後処理装置の第2弾です。

排出ガス後処理装置 【DPF編】

 

 近年、『 DPF・DPR・DPD 』と並び、最も重要な後処理装置とされるのが『 SCR 』です。

 

SCRとは...

 Selective Catalytic Reductionの略で、【 選択的触媒還元 】と直訳できます。

 前回の記事でも触れましたが、ディーゼルエンジンの排出ガス中には、

 特に有害とされる物質が2つ存在します。

 1つがPM(微粒子物質)であり、もう1つがNOx(窒素酸化物)です。

 DPFでPMを削減していた一方、SCRでは NOxの削減 を担っています。

 

 

 

NOxとは...

 Nitrogen Oxidesの略で、窒素の酸化物の総称で一酸化窒素や二酸化窒素が含まれます。

 ディーゼルエンジンの燃料となる軽油内の窒素化合物等が高温燃焼時に酸化されることで、

 NOxの発生につながります。

 

実は...

 一般的に、NOxとPMはトレードオフの関係にあたります。

 【トレードオフ = 相反関係】

 字のごとく、やっかいなことに

 『NOxを減らそうとすればPMが増加』し、

 『PMを減らそうとすればNOxが増加』する

 という性質なんです、、、

 例えていえば、

  ① 燃焼温度上昇 ⇒ PM減少 - NOx増加 

  ② 燃焼温度抑制 ⇒ PM増加 - NOx減少

 と表現できます。

 排出ガスの有害物質削減に際し、トレードオフ関係のどちらを優先するか?

 (ここではPMとNOx)によって後処理装置が異なるとも言えます。

 もちろん、SCRとDPFを併用することも可能で、

 近年、大排気量のエンジンでは併用式を採用することが多いようです。

 

選択的...?

 一般的にSCRシステムといえば、尿素(アンモニア)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

 実は、SCR = 選択的触媒還元 と表現されるように、還元剤にはいくつか種類が存在します。

 最近では、軽油が還元剤として用いられたケースも存在するようです。

 とは言え、現状では尿素を還元剤とすることが主流であり、

 SCRといえば尿素SCRとなることが大半です。

 

尿素SCRの仕組

 窒素酸化物にアンモニアを吹きかけることで生じる化学反応を利用し、

 無害である 【 窒素 】【 水 】 に還元しています。

 アンモニアは劇物に指定されるためタンクに貯蔵する等の取り扱いが原則できません。

 そこで、人体に悪影響のない取り扱いが容易な尿素水をひとまずタンクに貯蔵し、

 エンジン排気口の高温下に噴射することで加水分解生成されるアンモニアガスを取り出し、

 還元剤として使用います。

 尿素水として最も有名なものは、 AdBlue でしょうか。

 ドイツ自動車工業会登録商標品で、尿素濃度は32.5%、純水67.5%の高品位尿素水です。

 

尿素SCRのメリット

 ①燃費悪化要因が少ない

 ②尿素水の補給は必要であるものの総合的なランニングコストは従来比維持

 

尿素SCRのデメリット

 ①尿素水切れ時のエンジン始動不可となるリスク

 ②尿素水タンクや噴射装置の設置による重量増加

 ③尿素システム取付場所の確保が課題

 

 こうしてみるとデメリットばかりに目が行きがちですが、

 昨今の排出ガス規制をクリアするためには、

 まだまだなくてはならない装置であることに変わりはありません。

 むしろ、産業用分野においては、今後も尿素システムを搭載した機械が増加することは

 明白な状況です。

 技術革新がおこらない限り、しばらく『SCRシステム 』は、

 排出ガス規制の主流な対処策としてブラッシュアップが続くのではないのでしょうか。

 

参考リンク 環境再生保全機構 『大気の情報館』

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