エンジンメンテナンスにおける基礎知識

近年、ニュースなどでも取り上げられている【異常気象】。
体感的にも、この夏は猛暑日が続いています。
また、猛暑日が続くときは、秋の台風上陸回数も多い、というデータがあるそうです。

では、このような異常気象の時、エンジンにとって、影響はあるのでしょうか?
あるとすれば、どのような影響が出るのでしょうか?

 

写真は、ある【パッケージ非常用発電装置】の銘板です。

銘板の中に、【周囲温度】という記載があり、ここでは、【-5~40℃】と刻印されて
います。
では、この周囲温度の範囲を外れると、どのような影響が出るのでしょうか・・・。

 1.周囲温度が高い時(40℃以上)
   1)給気温度の上昇
     周囲温度が高いということは、エンジンに取り入れられる空気の温度が高くなり
     ます。

     シリンダ内に取り入れられる空気は、その温度が高くなると空気密度が低くなる
     ため、単位容積当たりの酸素量も低くなります。
     よって、設計上の出力が得られなくなることがあるのです。

     シリンダへの給気前に、インタークーラなどで空気温度を低く下げ、空気密度を
     高くするのは、そのためです。

     ※ また、ターボチャージャーなどで吸気圧力を高くすると、給気温度も高く
       なりますが、熱効率の良い『インタークーラ』で、給気温度を下げることで、
       高圧力の空気をシリンダ内に送り込みます。
       これにより、掃気効率のアップとともに、空気密度を高くしてシリンダ内で
       燃焼する燃料を増やし、出力アップを計ります。

   2)冷却空気の温度上昇
      屋内設置・屋外設置を問わず、ラジエータでの冷却方式の場合、ラジエータへ
      送る空気温度が高くなります。
      ラジエータ内の高温のエンジン冷却水を、ラジエータファンで空冷するのです
      が、その空気温度が高いと冷却効率が低下します。よって、設計温度以上の環境
      温度になると、エンジンのオーバーヒートになる可能性があります。

 2.周囲温度が低い時(-5℃以下)
     上記とは逆で、エンジンに取り入れられる空気の温度が低くなると、空気密度は
     高くなります。

     しかし、シリンダ内に取り入れられた低温の空気は、ピストンで圧縮しても、燃料
     の発火温度まで上昇しにくい状況となり、燃焼不良を発生することがあります。
     エンジンの停止中に、『冷却水ヒータ』などで、暖気しているのは、始動時の低温に
     よる燃焼不良を防止するために設置されています。

 3.台風や豪雨の時
     基本的な注意事項は以下の通りです。
      1)エンジンの排気管から、雨が侵入し、排気管やサイレンサーに雨水が
        溜まる。最悪の場合、ターボチャージャーや開放中の排気弁を通過して、
        シリンダ内に雨水が侵入します。
         ⇒  豪雨の後は、排気管やサイレンサーのドレン抜き弁で、水の有無を
        確認します。

      2)横殴りの雨が煙突の排気孔から侵入し、その後、猛暑などで乾燥したときに、
        排気管内部の未燃物(煤など)が剥離し、次回の運転時に、排気管から
        真っ黒な煤が降り落ちてくることがあります。

      3)燃料小出し槽が設置されている常用発電機や長時間型の非常用発電装置の
        場合、燃料小出し槽のエアー抜き管から雨水が入り、燃料タンク内に侵入
        します。
         ⇒  定期的に、燃料小出し槽のドレン切りを実施し確認します。

      4)屋外設置のパッケージ発電装置の場合、パッケージの給気ダクトや
        排気シャッターからの雨水の侵入がないか、点検します。
        特に、電気制御盤や発電機に雨水が入ると絶縁低下や通電時のショートや
        短絡火災の原因となります。

 

      以上、最近の気象とエンジンについて簡単にお話いたしました。

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