エンジンメンテナンスにおける基礎知識
今回は、バッテリー(蓄電池)のお話です。
蓄電池と一言で言っても、その分類方法や種類によって分けることができます。
Ⅰ.充電の可否
・一次バッテリー:充電の使い切りのもの
・二次バッテリー:充電することにより、再使用が可能なもの
Ⅱ.構造による分類
・アルカリ電池 :一般的な乾電池
・ニッケルカドニウム電池 :乾電池
・リチウムイオン電池:パソコンや携帯電話の電源用
・NAS電池(ナトリウム/硫黄) :大容量のバックアップ用バッテリー
・鉛蓄電池 :自動車や非常用発電装置用
今回は、非常用発電装置のパッケージ内などに装着されている、鉛蓄電池について述べることといたします。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は、ベント型とシール型に分けることができます。
1. ベント型(開放形)
ベント型バッテリーは、バッテリーの上部に、触媒栓が装着されています。
点検項目は、以下の通りです。
・電圧計測
バッテリーの1セルは、2Vが基本となります。
セルごとに、電圧を計測します。
・液面確認
バッテリー液の液面を確認します。
バッテリー液の減少の原因は、主に、自然蒸発と過充電がその要因です。
減少していた場合は、バッテリー液を補給する必要があります。
※ バッテリー液は、希硫酸のため、その取扱いには注意が必要です。
・比重計測
バッテリーのセルごとに、バッテリー液の比重を計測します。
充電状態のバッテリー液の比重は、基本【1.280@20℃】です。
比重計測の時には、その時のバッテリー液温度を計測する必要があります。
液温度が高い時は、見かけ上、比重は低くなります。
液温度が低い時は、見かけ上、比重は、高くなります。
よって、温度換算が必要です。
【20℃の時の比重】=【計測比重値】+0.0007(バッテリー液温度―20)
となります。
基本的に、比重が高いのは、過充電・バッテリー液の減少であり、
比重が低いのは、放電状態・バッテリー液の過補充が要因です。
・触媒栓
この触媒栓は、バッテリー内で発生した、水素ガスと酸素ガスを結合させ、水に戻して、バッテリー内に還元します。また、内圧も上昇すれば、触媒栓から放出されます。一般的には、3~4年で触媒栓を交換します。
2.シール型(制御弁式)
シール型の鉛蓄電池は、触媒栓は装備されていません。
バッテリーの上部に、制御弁がついており、バッテリーの内圧が上昇したときに、
内部ガスを放出します。
基本的には、メンテナンスフリーのバッテリーといえます。
点検項目は、以下の通りです。
・電圧計測
1個ごとのバッテリーの電圧は、種類によって違いますが、
2V、6V、12Vの3種類があります。
(写真のバッテッリーは、12Vです。)
バッテリー単体ごとに、電圧を計測します。
・内部抵抗値
バッテリーのセルごとに、電極(正極・負極)間の内部抵抗値を計測します。
バッテリーのメーカより、バッテリーの機種ごとに内部抵抗値の基準値と限界値
が決められています。
それにより、劣化の進行状況を判断します。
3.ベント型(開放形)とシール型(制御弁式)の共通点検項目
・電極棒の腐食
バッテリーが放電の際に、サルフェ―ションによる希硫酸の結晶(白い粉)や、接続電線の銅が腐食した緑青の粉(青い粉)が電極に付着し、抵抗値を上昇させることがあります。バッテリーの電極棒と配線端子の結合部は、点検ごとに清潔に拭き取り、ワセリンを薄く塗布します。
・バッテリー本体
内部圧力の上昇で、バッテリー本体が膨出したり、割れが発生していた
ことがありました。慎重な確認を行います。
まとめ
停電時に全電源が喪失しても、非常用発電機のバッテリーは、装置の停電信号を検知し、
操作電源やシーケンス制御の制御電源、そして、エンジン起動のセルモータ電源を担う
重要な機器です。
(制御電源の電圧は、メーカによって、24Vと12Vの2種類が存在します)
消防点検でも、半年に一度はバッテリーの詳細点検を実施します。
御参考までに、【非常用発電装置(PG78QY)バッテリー交換事例】も御参照ください。
なお、バッテリーの点検においては、水素ガスや希硫酸、直流電圧の短絡(火花)など、
危険な要素がたくさん含まれています。
ご不明な点などありましたら、産業エンジン.comを運営している中田エンジンにお問い合わせください。