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セラミック溶射について
セラミック溶射とは
セラミック溶射は、酸化物などのセラミック材料を高温で溶融し、基材に吹き付けて被膜を形成する技術です。この技術により、部品や基材にセラミック特有の特性や機能を付加することが可能になります。耐久性の向上や高機能化が求められるさまざまな産業分野で広く活用されています。
セラミック溶射の特性
セラミック溶射に使用される材料は主に酸化物系であり、ビッカース硬さ2000以上の高硬度と2000℃を超える融点を持つものが多いです。このため、以下のような多様な特性を基材に付与することが可能です:
・絶縁性:電気を通さないため、高絶縁抵抗が必要な用途に最適
・耐摩耗性:部品の摩耗を防ぎ、長寿命化を実現
・耐熱性:高温環境での使用に対応
・耐腐食性:腐食環境での部品保護
・低摩擦性:滑り性を向上し、摺動部品に最適
・抵反応性:化学反応を抑制し、特殊用途に対応
・耐濡れ性:液体が付着しにくい表面特性を付加
・耐スパッタ性:溶接や加工時の飛散物(スパッタ)から部品を保護
これらの特性を部分的に付与することで、金属部品や基材の性能を大幅に向上させることができます。
溶射プロセスと設備
セラミック溶射では、プラズマ溶射機が主に使用されます。この装置はアルゴンガスや水素ガスを用いて10000℃以上の高温アークを発生させ、セラミック粉末を溶融状態にします。溶融した材料を基材に吹き付けることで、緻密で高性能な被膜が形成されます。被膜の硬度が非常に高いため、加工にはダイヤモンド工具や専用の砥石が必要です。
主な材料とその特性
セラミック溶射に使用される代表的な材料とその特性は以下の通りです:
・酸化アルミニウム(Al₂O₃):耐熱性、高耐電圧(絶縁性)、耐摩耗性
・酸化アルミニウム+酸化チタン(Al₂O₃-TiO₂):耐摩耗性、高摺動性、繊維産業での糸道用途
・酸化チタン(TiO₂):緻密性、耐摩耗性、低摩擦性
・酸化クロム(Cr₂O₃):耐熱性、高緻密性、耐摩耗性
セラミック溶射は、耐久性や高性能化が求められる環境で不可欠な技術です。航空宇宙、発電設備、医療機器、自動車産業など、幅広い分野で利用されており、部品の品質向上と寿命延長に貢献しています。